おかあさんへ
うちの母は、しょっちゅうLINEを送ってくる。地元の風景といっしょに。
「げんきかー?こっちは、ゆきがすごいよ」
わたしは画像の保存ボタンを押しながらうんざりしてる。
なんで何回もLINEしてくるの?
そう思いながらいつもスタンプだけを送ってる。
すると訳のわからないふざけたスタンプを送り返してきて、
「へへっ」て言うんだよ。意味わかんないよね。
わたしは既読をつけてLINEを閉じる。これがいつものパターン。
次の日何やら大きな段ボールを持った配達員が家に訪ねてきたから、
サインして家の中に運んで、厳重に貼られたガムテープをびりびり破った。
中身見て真顔になった。
「むすめよ、かぜひいてないかー? ちょうしわるかったられんらくしなさいよー」
見覚えのある丸文字だった。
なんでいつもこんなの送りつけてくるの?別に手紙とか要らないんだけど。
イライラしながら箱の中を乱暴に漁った。
レトルトカレーにラーメン、スープの素がぎっしり。
一番下にはブランケットが入ってた。
ふわふわですごくあたたかいやつ。
わたしだって地元に帰りたい気持ち抑えて一人暮らし頑張ってんのに。
どうして気持ちをそぐようなことするの。
こっちの気も知らないで。
ほんとは家族みんなに会いたいし、おかあさんの料理が食べたい。
レトルトなんてたべたくない。がっこうもつかれた。せいかつもつかれた。かえりたい。かえりたい。
しかめっ面は気づいたときにはしわしわな顔に代わってて、なきじゃくってた。こどもみたいに。
目が覚めて、床に寝そべってる自分に気が付いた。
背中がズキズキしていたけど、頭はすっきりしてて、心はあたたかかった。
幼いころから過保護な母親、嫌なこともあった。
わたしが一人暮らしをはじめたあの日、電車の窓から見えた泣き顔を一生忘れない。直前までいつもみたいに元気にふざけていたのに、最後はこらえきれないような顔をしてたのを思い出した。
わたしはたくさんの愛を受け取ってきたんだね。幸せ者だね。
あと何回会えるかな。お返しできるように、こっちで一生懸命がんばるからね。
おかあさん、いつもありがとう。